社会問題研究会LEAD


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    私たちは、日本と世界の今の問題について、日々のニュースなどを観ながら話し合い、考えるサークルです。“あふれる情報に流されず、自分たちで考えよう!”をモットーに活動しています。


こんなことをします!

週に1~2回の部会

各メンバーが自分の関心のあるテーマを選び、調べたことを発表し討論します。新聞・ニュースを検討したり、「NHKスペシャル」などのドキュメンタリーを観たりします。

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研究成果を六甲祭(毎年秋に開催される神戸大学の学園祭)で展示します。毎年多くの来場者が訪れ、活発に話になります。

機関誌の作成

研究活動の集大成として機関誌を作成します。自分の研究が冊子になると喜びはひとしおです。

フィールドワーク・合宿、他大学との交流

毎年、研究テーマに関係のある施設や史跡・戦跡に行きます。夏休み合宿もやります。実際に現地に行くことで様々なことを感じることができ、研究も深まります。また、奈良女子大学など他大学との交流もおこなっています。

2023年 新歓案内

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(以下は過去に掲載したものです。)

2022年度前期の研究テーマは

「戦火があがるウクライナと緊迫する台湾、激震が走る世界経済~私たちはどう考えるべきか?」です

    ロシアのプーチン政権は、2月24日、ウクライナに対する軍事侵略を開始しました。「ロシア系の住民をジェノサイドから守る」と称して、ウクライナ全土にミサイルを雨あられとぶちこみ、ウクライナ人民のジェノサイドをいまこのときも強行しています。ゼレンスキー政権を倒壊させ、ロシアの傀儡政権をうちたてることを目的としたこの世紀の蛮行を、私たちは決して許すことはできません。しかもプーチン政権は、「ロシアは最強の核保有国だ」と叫び核攻撃の意志さえちらつかせています。熱核戦争の危機さえ高まっているのです。 
    この侵略者プーチンのロシアに対して、米欧の政府は、経済制裁を発動するとともに、ウクライナに接するポーランドなどの諸国に、NATO軍部隊を増配備しロシア軍と対峙しています。このことのゆえに、米欧とロシアとの全面激突――第三次世界大戦の危機が高まっていると言わなければなりません。 
 ウクライナで戦火が拡大し世界大戦の危機が高まるもとで、私たちはどう立ち向かえばいいのでしょうか。社会的な論調はおしなべて、対ロ経済制裁で圧力をかけつつ外交交渉を追求する米欧日などの権力者に期待をかけ、「国連憲章にもとづく外交的解決」をもとめています。しかし、これで果たしてプーチンの戦争を止めることができるのでしょうか? 「NATOの東方拡大」をおしすすめてきた米欧の政府とそれを阻止し西方に押し返そうと企むロシア政府との利害対立、理念上の対立を棚上げにして、これら両者の外交交渉で解決できると考えるのは幻想にすぎないのではないでしょうか。 
    私たちは、真っ先に戦争の犠牲になる民衆の立場に立って、戦争を止めるにはどうしたらいいのか、プーチンの戦争を転回点として危機が深まる現代世界をきりひらく研究をおこなおう! 

    なぜプーチン政権はウクライナに侵攻したのか。その世界史的意味は何なのか。これらのことについて、様々な視点から考えよう! 
    プーチンは「ソ連邦解体とNATOの東方拡大は20世紀最大の地政学的惨事」という主張を再三にわたっておこなってきました。プーチンを突き動かしているものは「偉大なロシアの復活」という「大ロシア主義」のイデオロギーにほかならず、ウクライナ侵略は、ロシアとウクライナを単一の民族とみなすこの大国ナショナリズムの軍事的貫徹にほかなりません。まさにこの「大ロシア主義」こそは、ロシアの版図拡大(=土)を成し遂げるために、ロシア民族の一体性(=血)をもちだして正当化するナチス・ヒトラーばりの「血と土」のイデオロギーではないでしょうか。 
    それだけではありません。「一国社会主義建設可能」論をうちだし、ソ連邦を官僚主義的におし歪めるとともに、外に向かっては膨張主義的にソ連の版図を拡大していったのがスターリンでしたが、プーチンのやっていることは、まさにこのスターリンのやり口を踏襲するものではないでしょうか。このようなスターリン流のやり口は、本当のマルクス主義にもとづくものなのでしょうか。いま改めて、ソ連邦崩壊の意味とは何であり、それがその後のロシアに何をもたらしたのか、そもそもソ連邦は本当の社会主義だったのか、これらのことをも現在的に掘りおこし、考えることが私たちに問われているのではないでしょうか。 
    他方、プーチンのロシアを「専制主義」と烙印し、「専制主義に対する民主主義の戦い」を叫ぶバイデン政権もまたギマンに満ちているのではないでしょうか。これが第二の点です。 
    そもそも、歴代アメリカ政府が「民主主義」の名のもとにやってきたことは、アフガニスタンやイラクにたいする侵略戦争でした。数十万ものムスリム人民を血の海に沈めたのです。しかも彼らは、国内では愛国主義を煽りたてるとともに、戦争に反対する人々を弾圧する「愛国者法」を制定し、ファシズムを強化してきました。このアメリカ権力者が唱える「民主主義」とは「野蛮と専横」の別名でしかないではありませんか。他方、このアフガニスタン・イラクでの戦争の泥沼化を奇貨として、没落の急坂を転げ落ちるに至ったアメリカの力の衰退を見てとって、このアメリカから覇権を奪取するための“挑戦”を開始したのが、ネオ・スターリン主義の中国と「亡国」ロシアのプーチンにほかなりません。バイデンのいう「専制主義に対する民主主義の戦い」とは、ネオ・スターリン主義(中国・ロシア)とファシズム体制をとる帝国主義(アメリカ)との対決ではないでしょうか。 
    じっさい、プーチン・ロシアのウクライナ侵略は、「台湾の中国化」の策動を強めるネオ・スターリン主義中国の習近平政権と結託したユーラシア大陸の東西での反米の“同時決起”という歴史的意味をもつのではないでしょうか。北京オリンピックの最中にもたれた中露首脳会談において、習近平とプーチンは、アメリカに対抗して「新型の国際関係」を中露両国でつくりだしていくことを確認しました。このことは、没落の急坂を転げ落ちる核大国アメリカにとって代わって、中国・ロシアが世界の覇権を握り、21世紀世界を再編していく企みの号砲ではないでしょうか。こうしていま、アメリカと中国・ロシアとが全面的に激突する〈東西新冷戦〉へと現代世界は急転回していると言わなければなりません。中国との結託を基礎としたロシアによるウクライナ侵略は、〈東西新冷戦〉の新たな局面を画すものと言わなければなりません。こうした〈新冷戦〉のもとで世界大戦の危機さえ高まっているのではないでしょうか。私たちは戦火があがるウクライナの問題とともに、戦乱が勃発しかねない緊張が急激に高まる台湾危機の問題についても考えていこう! 
    第三に、ロシアのウクライナ侵略に対抗して、「金融上の核兵器」と呼ばれる国際銀行間通信協会(SWIFT)からのロシアの排除をG7とEUが決定しました。これによって、ルーブルの貨幣価値が急落し、ロシアはデフォルト(債務不履行)=国家的破綻の危機にたちいたっています。ソ連崩壊直後の時期の混乱した経済状況に近づいているとさえ言われています。だがその他面で、ロシアに制裁を科した米欧日の諸国の経済じしんも「返り血」を浴び、物価高騰や金融市場の動揺などにみまわれています。このことは、「経済のグローバル化」のもろさを、さらにはグローバル化せざるをえなかった現代資本主義の末期性を示す事態ではないでしょうか。 
    しかも対ロシアの経済制裁を契機としたかつてない経済危機をのりきるために、各国の政府・資本家たちは、生活必需品の価格引き上げや賃下げ・首切りなどによって、この危機のいっさいを労働者に犠牲転嫁しようとしています。すでに約2年間のコロナ・パンデミックのもとで、各国の独占資本家と政府は、生み出された経済危機を労働者に転嫁してきました。そうすることで、富める者はますます富み、貧しき者はますます貧しくなるという極限的な格差の拡大と貧困層の拡大が世界的に露わとなりました。そしてこの貧富の格差の極限的な拡大と貧困の深まりが、ウクライナ戦争を契機としてますます深刻なものとなりつつあるのです。このことは、末期資本主義の悪の現われでもあると言えるのではないでしょうか。 
    資本主義の矛盾と対決し、これを根底からのりこえる方途を明らかにしたマルクスの『資本論』に学び、激しく動揺し末期性をあらわにする現代資本主義の矛盾を明らかにしていこう! 
    第四に私たちは、このような〈東西新冷戦〉への現代世界の急転回のもとで、日本の岸田政権が「戦争する国」に日本をつくりかえるために改憲や日米軍事同盟強化、一大軍拡に突き進んでいることの危険性についても批判的に研究していこう! 
    プーチンが「核兵器」の使用をほのめかしているなかで、安倍元首相が日米で「核共有」し、敵とみなした国にたいして日本が「それを落としていく」ことを「タブー視してはならない」(2月27日、フジテレビの報道番組)と発言しました。この安倍元首相の発言は、中国に対する米日の核先制攻撃の体制をつくりだしていく日本政府の戦争準備の危険性を示しているのではないでしょうか。 
    沖縄の地方紙では、「台湾有事」の際には、南西諸島の40カ所を軍事拠点として強制接収するという反憲法的な作戦計画が練りあげられていることが報じられてもいます。岸田政権が進める安保強化・一大軍拡・改憲の動きは、「暗黒の戦争への道」に私たちをひきづりこむものではないでしょうか。岸田政権の「戦争する国」づくりの実態とその意味するものについて批判的に研究していこう! 同時に、「台湾の中国化」を狙った軍事行動に拍車をかけるネオ・スターリン主義中国の問題についても、批判的に研究しよう! 
 
    ウクライナで燃えあがる戦火と緊迫する台湾情勢、そして激しく動揺する世界経済。この危機を突破する方途はどこにあるのか。ともに考えよう! 

(3月8日)


以下は2021年10月に掲載したものです。

「岸田政権のコロナ対策、改憲・日米軍事同盟強化の問題を考える」

 
1.“ハトの羽をまぶしたタカ派政権”の発足

   10月4日、岸田新政権が誕生しました。岸田首相は、「私の特技は、人の話をよく聞くこと」と自らをおしだしながら“菅首相との違い”をアピールしています。これにたいして、マスコミなどでは「政治への信頼回復に向け、真摯に説明を尽くす姿を」(「朝日新聞」)といった淡い期待が煽られています。けれども私たちは、岸田新政権の危険な本質から目をそらしてはならないと思います。
 そのことは、自民党総裁選での“論戦”をみれば明らかではないでしょうか。高市氏が「防衛費はGDPの2%で10兆円規模に」、「敵基地攻撃能力の保有は絶対」、「新しい憲法の制定を」と次々と主張するや、岸田氏はこれに呼応するように「防衛費はGDP1%に縛られてはならない」「敵基地攻撃能力保有は有力な選択肢」、「憲法改正を私の任期中にやり遂げる」などと次々に言明。高市氏と競い合うようにタカ派の主張を開陳したのが岸田氏でした。
   このように、高市氏を急先鋒にして、自民党総裁候補者たちがタカ派の主張を競い合ったことに、高市氏を担ぎ上げた自称「右翼の軍国主義者」たる安倍元首相はほくそえみながら、総裁選を次のように総括したのでした。「私たちは高市さんを通じて、本来自民党はどうあるべきかしっかり示すことができた」と。
 安倍・麻生氏のバックアップをうけて自民党新総裁となった岸田氏は、党の役員人事において、自民党副総裁に麻生氏、幹事長に安倍氏の腹心である甘利氏(安倍・麻生両氏と並んで「3A」と呼ばれている)、そして党の政策を策定する政調会長には高市氏を就任させました。これらの事態に示されるように、岸田政権誕生の背後では、“キングメーカー”の座をかけた安倍氏と二階氏の自民党内「権力闘争」が安倍氏勝利に終わり、「3A」の体制が築かれたということがうきぼりになったのです。甘利幹事長は「党内で不協和音が出たときには『ご老公さま』(水戸黄門)にお出ましをいただく」などと麻生副総裁を水戸黄門にたとえながら、自分たちの絶大な権力を誇示しました。
   高市氏や甘利氏らが党幹部として「本来自民党はどうあるべきかしっかり示す」(安倍氏)ことによって、岸田政権は軍事強国化と強権的支配の強化に突き進んでいくに違いありません。

2.新たに発足した岸田政権の危険性
 
   岸田新政権について、マスコミでは「薄味政権」「安倍ブースター政権」といった評論がなされていますが、このような表面的な把握にとどまることなく、私たちは岸田政権の危険性について深くきりこんでいく必要があると思います。 
 
①強権的支配体制の強化 
   今年の冬にも新型コロナウイルス感染拡大の「第6波」がやってくると専門家が指摘するなか、岸田政権は、菅前政権が成立させた医療法等改定案にのっとって、感染症対策を主要に担ってきた公立・公的病院の統廃合や病床削減をあくまで強行しようとしています。あまりにでたらめではありませんか。このような自民党政権の政策ゆえに、コロナ感染拡大のたびに医療崩壊が引き起こされ、多くのコロナ患者が自宅に放置され死に追いやられているのです。 
   医療体制の拡充をネグレクトしておきながら、岸田首相は「緊急時は(病院に)半強制的に協力してもらう。応じなければ罰則も考える」というように、政府が「緊急時」とみなしたときには、病院にたいして政府の方針に強制的に従わせる意志を語っています。これはあまりに危険ではないでしょうか。今でさえ、医療現場ではコロナ患者用の病床を確保するために、それ以外の患者用の病床削減を余儀なくされています。これにたいして、政府が医療体制の拡充を放棄したうえで、「罰則」をふりかざしながら“緊急時だからコロナ病床を確保せよ”などと病院に号令をかけることは、コロナ以外の患者は放置せよと病院に強制することをしか意味しないではありませんか。 
   さらに岸田自民党は、衆院選に向けた政権公約において「人流抑制のため、より強い権限を持った法改正を実施する」と私権制限のロックダウンの法制化に言及してさえいます。コロナ感染拡大「第6波」が引き起こされた際には、岸田政権は、ロックダウンを実施して私たち学生・労働者・市民の基本的人権を制限することをも狙っているに違いありません。 
   このように、岸田政権は、コロナに乗じて私たちの基本的人権を制限する強権的支配体制の強化に突き進んでいるとしか考えられません。これは新たなファシズムではないでしょうか。批判的に研究していきましょう。 
 
②日米軍事同盟の強化 
   岸田自民党は、政権公約において「相手領域内で弾道ミサイルを阻止する能力を保有する」ことを掲げています。 
   自民党の政権公約を策定した高市氏は、「日本は精密誘導ミサイルを持つべき時期にきている。配備は絶対だ」「アメリカの中距離ミサイル、できれば長距離ミサイルを西日本に配備すれば中国全体の航空基地も射程に入る」などと叫びたてています。彼女は「先に相手国の基地を実質的に無力化した国が勝利する」と公言してさえいます。高市氏に呼応して、岸田首相も「敵基地攻撃能力の保有は有力な選択肢だ」と称して、アメリカ製のステルス戦闘機F35の大量購入・配備とともに、中距離ミサイルの開発に意欲をみせています。まさに岸田政権は、「やられる前にやれ」とばかりに、日米が一体となって中国のミサイル基地を先制攻撃し、周辺住民もろとも焦土と化す体制を構築することを狙っているのだといわなければなりません。これはあまりに危険ではないでしょうか。 
   じっさい、すでに岸田政権は、対中国の先制攻撃を想定した日米の軍事演習を強行しています。10月3日、まさに岸田政権の発足にあわせて、日米両政府は、敵基地先制攻撃の要となる米軍のステルス戦闘機F35の発着訓練を、海上自衛隊の軍艦を使って強行しました。まさにこれは、自民党が政権公約で掲げる「相手領域内で弾道ミサイルを阻止する能力の保有」が何を意味するのかを象徴的にしめしているではありませんか。彼らは、核兵器が搭載可能で、敵のレーダーに探知されにくいステルス戦闘機F35を使って中国の奥地にまで侵攻し、中国にたいして先制核攻撃をおこなうことを想定しているにちがいありません。さらに岸田政権は、この演習と一体のものとして、米英日の3カ国が空母を総動員するかたちで、「台湾有事」を想定した大規模軍事演習を沖縄南西の太平洋上で強行しました(10/2、3)。まさに岸田政権は、政権発足と同時にアメリカとともに中国にたいする戦争挑発にうってでているのです。これに激怒した中国・習近平政権は、中国軍の戦闘機を相次いで台湾の防空識別圏に進入させた(10/1~4)のをはじめ、軍事行動をエスカレートさせています。まさに岸田政権による日米軍事同盟強化の策動は、「台湾問題」をめぐる米-中の一触即発の戦争的危機をいやましに高めるものにほかならないのではないでしょうか。 
   それだけではありません。岸田自民党は、政権公約において「GDP2%以上も念頭に、防衛関係費を増額する」とうたいあげています。対中国で日米軍事同盟強化と日本の軍事強国化をよりいっそうおしすすめるために、軍事費を今の5兆4000億円から「GDP2%以上」すなわち10兆円を超えて青天井に引き上げることを企んでいるのです。そのための財源は、社会保障費の削減によって捻出しようとたくらんでいるに違いありません。岸田政権による戦争と貧困の強制に批判的にきりこんでいきましょう。 

③改憲への突進 
   政権公約において岸田自民党は、「憲法改正原案を早期に実現する」と宣言しています。岸田首相は、自民党の改憲4項目について「どれも大変重要だ」と強調し、「憲法改正を私の任期中にやり遂げる」と期限を切って改憲を実現する意志をあらわにしています。岸田政権が改憲の早期実現へ並々ならぬ意欲を燃やしているのは、②でみたように、日本をアメリカとともに戦争する国へと飛躍させるために、それにふさわしい内実のものへと憲法を変えるためではないでしょうか。それは①でみたような強権的支配体制の強化とも密接不可分ではないでしょうか。 
   実際、改憲4項目の核心は、首相が「緊急事態」とみなせば首相に全権を集中させることができる、ナチスの全権委任法と同断の「緊急事態条項」の創設と、9条でうたわれている「戦争放棄」条項の破棄と自衛隊・自衛権の明記、すなわち「集団的自衛権」の名のもとに自衛隊の海外での軍事活動をフリーハンド化することにあるといえます。それだけではありません。自民党政調会長の高市氏は、4項目以外で重視すべき改憲項目として、現行憲法にうたわれた「公共の福祉」を「公の秩序」に変更し、「国家主権に関わる事態」=戦争の際には「(個人の自由や権利を)制限できる形をはっきりさせたい」などと言い放っています。〈軍国日本〉復活をたくらむ高市氏の“国家元首である天皇を頂点とした秩序=「公の秩序」の下に国民は個人の自由など主張せず滅私奉公すべし”という国家主義的な危険な思想がはっきりとしめされているではありませんか。この高市氏を自民党の政策を取り仕切る政調会長にすえた岸田政権による改憲がいかに危険なものであるか、私たちは批判的に研究していく必要があるのではないでしょうか。 
 
   上の①~③以外にも、岸田首相は「原子力ムラのドン」と呼ばれる甘利氏を自民党幹事長にすえたように、原発再稼働・新増設を積極的に推進するに違いありません。岸田新政権が日本をどのような方向に導こうとしているのか、私たちは批判的な目をもって後期の研究活動を進めていきましょう!

(10月13日) 


以下は2021年5月に掲載したものです。


「菅政権の弱者切り捨て、メディア統制を問う」
――マルクス『資本論』に学び、激動する日本・世界を読み解こう――

 Ⅰ コロナ・パンデミック下であらわとなった現代        資本主義の末期性

   WHOの「パンデミック宣言」から1年。政府の正式発表でさえコロナ感染拡大を原因とした解雇は10万人を超え、仕事のシフトから外され実質上の失業状態にある労働者は150万人にも及んでいます。政府の統計では、再就職をあきらめた失業者は除外されており、これじたいが氷山の一角にすぎません。コロナ・パンデミックで経営危機に陥った飲食・宿泊・レジャー・観光などの諸企業の資本家は、非正規雇用の労働者や、アルバイトの学生をまっさきに解雇・雇い止めにし、夥しい数の労働者が路頭に放り出されているのです。
   その他面で、コロナの下でもITや電機などの大独占資本は史上空前の利潤をあげ、内部留保金を何百兆円も積み増しています。あまりに理不尽ではありませんか。マルクスはその著書『資本論』で次のように論じています。

 「一方での富の蓄積は、その対極では、すなわち、自分じしんの生産物を資本と して生産する階級のがわでは、同時に、貧困・労働苦・奴隷状態・無智・野生化・ および道徳的堕落・の蓄積である」
(『資本論』第一部二三章「資本制的蓄積の一般的法則」)

   コロナパンデミック下で“富める者はますます富み、貧しきものはますます貧しくなる”という極限的な格差拡大がもたらされているいまの日本社会の現実は、搾取する者と搾取される者との階級対立がむきだしのかたちで露わとなっているといわなければなりません。この悲惨きわまりない現実こそ、マルクスが150年以上も前に喝破したように、資本主義の野蛮性と腐朽性を示した事態にほかならないのではないでしょうか。
   中国・武漢で発生した新型コロナウイルス感染症は、〈ヒト・モノ・カネ〉が国境を越えて自由に往き来するグローバルな経済の波にのって、瞬く間に世界に広がりました。自国経済が打撃を受けることを恐れた各国政府による国境閉鎖や都市封鎖によって、「実態経済」は完全に凍りつき、パンデミックと経済破局とが同時に進行するという未曾有の事態が現出しました。まさに世界は〈パンデミック恐慌〉へと突入したのです。
   この事態はなにゆえにもたらされたのか。歴史的にふり返るならば、自称「社会主義国」ソ連邦が自己崩壊をとげたことにおごり高ぶった「帝国主義の盟主」アメリカは、アメリカ独占資本の海外進出をスムースになしとげるために、種々の規制緩和を各国政府に強要し、そうすることによって〈経済のグローバル化〉が一挙に推し進められました。このことを基礎としてアメリカや日本などの諸独占体は、安価な労働力を求めて中国や東南アジアの諸国に次々と生産拠点を移転しました。その他面で彼らは、国内の生産拠点を統廃合し大量の労働者の首切りを強行し、そうすることによって国内製造業の空洞化が一挙に進行しました。この過程で激増したのが非正規雇用労働者であり、製造業で首を切られた労働者の「雇用の受け皿」として肥大化したのが、飲食・レジャー・観光などのサービス産業や、コンビニなどの小売業にほかなりません。
   まさしく非正規雇用労働者は、好況期には諸独占体に低賃金で雇用され、不況になれば真っ先に首を切られる使い捨て自由な存在として、資本家によって大量に創出されたのです。まさにこれこそマルクスが『資本論』で明らかにした「産業予備軍(相対的過剰人口)」の今日的形態にほかなりません。

 「剰余労働者人口が蓄積の――または、資本制的基礎上での富の発展の――必然的産物だとすれば、この過剰人口は逆に、資本制的蓄積の槓杆となる。それは、(中略)まったく絶対的に資本に属するところの、自由に処分しうる産業予備軍を形成する。それは、資本の転変つねなき増殖慾のために、現実的人口の制限に係わりなく何時でもすぐ利用できる人間材料を提供する」
(『資本論』第二三章)
   
マルクスのいう「商品人間」へとおとしこめられた労働者の悲惨が、コロナ・パンデミックの下で日々うみだされている。この日本社会の現実こそ、マルクスが生きた19世紀の産業資本主義の時代における「古典的貧困」「古典的階級分裂」と同様の事態だというべきではないでしょうか。この資本主義社会の矛盾を根本から解決する方途を探究するために、マルクスの『資本論』にも学びながら、研究を進めていこう!

 

Ⅱ 反人民性をむきだしにする菅政権

   コロナ・パンデミックの下で、日本の菅政権はいったいいかなる諸施策をとっているのでしょうか。
 
①貧窮人民の切り捨てと大企業支援
  「職を失い収入はゼロとなった」と絶望の淵においやられる労働者が数多うみだされているにもかかわらず、「自助」の理念を掲げる菅政権は、補正予算においても、今年度予算においても、失業者や貧窮に苦しむ労働者・市民の支援をいっさい盛り込みませんでした。「カネがない者は野垂れ死ね」と言っているに等しいではありませんか。他方で彼らは、「コロナ感染症の拡大は、むしろデジタル社会への変革のチャンス」と唱える情報通信(IT)産業や電機産業の独占資本にたいしては、「事業転換支援」の名目で何十兆円もの予算を組み込んでいるのです。菅政権は、“強い者が生き残り、弱い者は淘汰されて当然”という「社会ダーウィニズム」思想にもとづいて、貧窮人民切り捨て、大企業優遇の政策をとっているといわなければなりません。
  そればかりではありません。菅政権は、コロナ感染拡大に対応した医療体制拡充などの対策をも完全にネグレクトし、そうすることによって、大阪をはじめ全国各地で医療崩壊がひきおこされています。それにもかかわらず彼らは、生活保障なき「緊急事態宣言」を発令し、飲食業などの中小企業やそこで働く労働者の職を奪うことを意味する施策を泥縄的に続けているにすぎないのです。菅政権のコロナ対策・棄民政策の問題に批判的にきりこもう!
 
②「地球温暖化対策」の欺瞞性
   地球温暖化によって、巨大台風による被害の激甚化や森林火災の激増など、私たちの生存さえ脅かされる事態がうみだされています。このようななかで、アメリカ、EU、中国などの各国政府はこぞって「2050年CO2排出ゼロ」などの「CO2排出削減目標」なるものを提示しています。菅政権も「2050年カーボンニュートラル」にむけた「グリーン成長戦略」と「2030年度までに2013年度比で温室効果ガスを46%削減する」という新たな目標を提示しました。だがこの菅政権の地球温暖化対策は、手放しで歓迎できるものでしょうか。
   日本のある製造業の幹部は次のように言っています。「各国のグリーン政策の目的には表と裏がある。もちろん表は環境負荷の低減だが、裏には自国域内の経済成長という目的がある。むしろ、環境負荷の低減というクリーンな志を持つことはお題目にすぎず、経済成長こそがメインストリームだ」、と(経済誌「週刊 ダイヤモンド」2021年2月20日号より)。
   じっさい、日本をはじめとする製造業の諸企業は、「地球温暖化対策」と称して、その製造過程で大量のCO2を排出することを隠蔽しながら、電気自動車(EV)の大量生産・販売に拍車をかけています。こうした新たな利殖の機会を「地球温暖化対策」技術諸形態の商品化に求めている大企業独占体の意を受けて、これら大企業への補助金などの支援策をうちだしているのが、「グリーン」の旗を掲げる菅政権です。
   それだけではありません。菅政権は「カーボンニュートラル」のためと称して、運転40年超の老朽原発を含む全国の30数基の原発の再稼働に躍起になっています。だがこれは、第二第三の福島原発事故をもたらしかねない危険な動きではありませんか。しかも、中間貯蔵施設さえ設置されず行き場を失った放射性廃棄物=「核のゴミ」はますます増え続けるのです。
   しかも地球温暖化対策は、レアアース争奪と新技術開発競争の様相をも示しています。とりわけ、21世紀の覇者の座をかけて激突するアメリカと中国の二大国が「地球温暖化」対策の主導権をめぐっても角逐を深めています。「地球温暖化対策」の名においてくり広げられている資源争奪、新技術開発競争はむしろ新たな乱開発=地球環境破壊と貧困の強制、戦争的危機をもたらしかねないのではないでしょうか。こうした問題にも、批判的にきりこんでいこう!
 
③強権的支配の強化
   菅政権は、国内の強権的支配の強化にものりだしています。これは、「戦争する国」づくりと一体の危険な動きではないでしょうか。
   この春、NHKの報道番組の“2枚看板”と言われた二人のキャスター(「ニュースウォッチ9」の有馬嘉男氏と「クローズアップ現代+」の武田真一氏)が突如として“降板”させられました。彼らは、番組に出演した菅首相や自民党の二階幹事長にたいする批判的質問を発したことをもって、菅政権の露骨な圧力を受けて降板に追いやられたのです。「君主は、憎まれない程度で、恐れられなければならない」というマキャベリ『君主論』の考えを信条とする菅首相は、自らに歯向かうメディアをしめあげる”恐怖政治”をしいていると言わなければなりません。
   それだけではありません。菅政権は、「国のかたちを変える」と称して、「デジタル庁」の創設に突進しています。彼らは、マイナンバーカードの普及とその機能のスマホへの組み込みをテコとして、あらゆる個人情報(預貯金、医療・健康、運転・犯罪歴、さらには行動歴・思想・趣味嗜好など)を首相直轄の「デジタル庁」に集約し、首相・NSC(国家安全保障会議)による国民の総監視=総管理の体制を構築しようとしているのです。彼らは政府のコロナ対策に不満や怒りを抱く国民を掌握しおさえつけるとともに、いざ「有事」となれば、国民を戦争に総動員することを狙っているのではないでしょうか。
   しかも菅政権は、戦争法や秘密保護法、沖縄・辺野古への新基地建設に反対し、大学での軍事研究に反対してきた学者を日本学術会議の新会員に任命することを拒否しました。このことは、日本学術会議を戦争翼賛団体へとつくりかえるためというたくらみを示すものではないでしょうか。現に大企業の意を受けた菅政権は、日本経済の未曾有の危機をのりきるために、「経済の軍事化」=軍需生産の一挙的拡大をはかろうとしています。そのために彼らは、防衛技術開発にかかわる基金の創設をテコとして、「産・官・学」共同の軍事研究に、全国の大学を組みこもうとしているのです。「大学の自治」や「学問の自由」をふみにじる菅政権のこのような策動は、戦前の言論弾圧事件=滝川事件を彷彿とさせるものであり、戦争に向けた新たなファシズムではないでしょうか。
   じっさい菅政権は、今月16日の日米首脳会談で、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を日米共同声明でうたいあげました。中国の台湾に対する軍事侵攻を阻止する軍事体制を、日米共同で構築することを宣言したのです。「スタンドオフミサイル」導入などの敵基地先制攻撃体制の構築やアメリカ中距離核ミサイルの日本配備の受け入れなど、日米の対中国攻守同盟の飛躍的強化がいま、急ピッチで進められています。こうした菅政権による戦争とファシズムの動きにも批判的にきりこもう!
 

                                                               (5月2日)


 

以下は2021年3月に掲載したものです。

2021年度の研究テーマは

「菅政権の弱者切り捨て、メディア統制を問う」です。 

 
   WHOの「パンデミック宣言」から1年。政府の正式発表でさえ、コロナ感染症拡大を原因とした解雇は9万人を超え、首を切られていないものの仕事のシフトから外され実質上の失業状態にある労働者は150万人にも及んでいます。政府の統計では、再就職をあきらめた失業者は除外されており、これじたいが氷山の一角にすぎません。パンデミックで経営危機に陥った飲食・宿泊・レジャー・観光などの諸企業の資本家は、非正規雇用の労働者や、アルバイトの学生をまっさきに解雇・雇い止めにし、そのことによって夥しい数の労働者が路頭に放り出されているのです。 
   他面では、コロナの下でもITや電機などの大独占資本は史上空前の利潤をあげ、内部留保金を何百兆円も積み増しています。コロナパンデミック下で、“富める者はますます富み、貧しきものはますます貧しくなる”という極限的な格差拡大がもたらされているのです。搾取する者と搾取される者との階級対立がむきだしのかたちで露わとなっている今の悲惨は、資本主義の野蛮性をこそ、示しているのではないでしょうか。 
   このかつてない状況のもとで、「まずは自分のことは自分でやる」という「自助」の理念を掲げる菅政権は、コロナパンデミックで苦境に叩きこまれた労働者・勤労人民にたいする支援をおざなりにしています。他方で、彼らは、「コロナ感染症の拡大は、むしろデジタル社会への変革のチャンス」と唱える情報通信(IT)産業や電機産業の独占資本にたいしては、「事業転換支援」の名目で何十兆円もの予算を組むなど、露骨な大企業優遇策をとっているのです。まさにこれは、“強い者が生き残り、弱い者は淘汰されて当然”という「社会ダーウィニズム」思想にもとづく棄民政策ではないでしょうか。 
  「古典的貧困」と「古典的階級分裂」というべき資本主義の矛盾が露わとなっているいまこそ、資本主義の変革に生涯をささげたマルクスの不朽の名著『資本論』にも学び、研究を進めていこう! 
   地球温暖化によって、巨大台風による被害の激甚化や森林火災の激増など、私たちの生存さえ脅かされる事態がうみだされています。このようななかで、アメリカ・EU・日本や中国などの各国政府はこぞって「2050年CO2排出ゼロ」などの「CO2排出削減目標」なるものを提示しています(菅政権も「2050年カーボンニュートラル」にむけた「グリーン成長戦略」を提示)。しかしこれは、2050年までは、CO2を出し続けるということの宣言でもあるのです。これほど欺瞞的なことはありません。いやそもそも彼らは、深刻化する「気候変動問題」を解決するためと称して、自動車産業の独占資本の電気自動車(EV)の売上拡大にとっての好条件とみなしてその支援に躍起となったり、重電産業の独占資本の再生可能エネルギーの発電施設(たとえば洋上風力発電)の開発・整備の支援をおこなったりというかたちで、「地球温暖化対策」を、経済危機にあえぐ大企業の延命のための利殖の機会たらしめようとしているのです。「地球温暖化防止」の名による新たな新技術開発競争は、〈大量生産・大量消費・大量廃棄〉という資本制生産様式の矛盾をこそ露わにしているのではないでしょうか。地球温暖化問題をめぐる各国政府の対応の問題を明らかにし、地球温暖化問題の真の解決の方途を探っていこう! 
   この春、NHKの報道番組の“2枚看板”と言われた二人のキャスター(「ニュースウォッチ9」の有馬嘉男氏と「クローズアップ現代+」の武田真一氏)が突如として“降板”させられました。彼らは、番組に出演した菅首相や自民党の二階幹事長にたいする批判的質問を発したことをもって、菅政権の露骨な圧力を受けて降板に追いやられたのです。「君主は、憎まれない程度で、恐れられなければならない」というマキャベリ『君主論』の考えを信条とする菅首相は、自らに歯向かうメディアをしめあげる”恐怖政治”をしいていると言わなければなりません。まさにこれは新たなファシズムではありませんか。 
   しかも菅政権は、国内では、メディア統制や学界の統制を強めながら、外に向けては、中国の膨張主義的軍事行動に対抗して、アメリカとともに「戦争する国」へと日本を飛躍させるために、敵基地先制攻撃の軍事体制構築をはじめとする日米安保同盟の強化につきすすんでいます(「中国の脅威への対処」をうたいあげた日米「2+2」など)。アメリカ・バイデン政権もまた、沖縄からフィリピンにかけて、対中国の中距離核ミサイル網を3兆円もの巨費を投じて整備する案をうちだしているのです。このバイデン政権に積極的に呼応しているのが菅政権にほかなりません。こうした菅政権による戦争とファシズムの動きにも、批判的にきりこもう! 
 
   私たち社会問題研究会LEADに入部し、新たな時代を切りひらく研究活動をともに推し進めよう!

(3月30日) 


以下は2020年11月に掲載したものです。

今年のテーマは「菅政権の危険性を問う」です。


   いま、新型コロナのパンデミック恐慌のもとで、世界各国で感染と貧困と政府による強権支配が強まっています。かつてなく危機が深まる状況の下で、私たちはすべてのみなさんに呼びかけます。日本で学ぶ学生としてこの画歴史的な状況をいかに考え向きあっていくかを話し合っていこう、と。

   日本では、新たに菅政権が発足しました。この政権は、日本学術会議会員の任命を拒否し、その強権性を露わにしています。この事態が、安保法制=戦争法や秘密保護法など安倍政権下での反憲法的な政策にたいして批判的な主張をしていた6名の学者を見せしめ的に排除したものであることは誰の目にも明らかです。自らにたてつくものはいっさい許さないという菅政権の危険な姿勢があらわになっていると思います。
   問題はそれだけにとどまりません。菅政権は「日本学術会議のあり方を見直す」と称して、学術会議を政府の統制下におく追求にのりだしています。安倍政権のもとで軍学研究を推進する制度が創設されたことにたいして、日本学術会議は反対の姿勢を鮮明にしてきました。そのことによって、軍学研究に協力する大学は激減しています。この事態に業を煮やした菅政権は、あろうことか日本学術会議を“戦争翼賛機関”へと抜本的につくりかえることに踏みだしたのです。まさにこれは「学問の自由」「言論・表現の自由」を傲然とふみにじる新たなファシズムではないでしょうか。
   このような菅政権による学界への統制は、「敵基地攻撃能力の保有」をはじめとする「戦争する国」づくりと一体のものにほかなりません。彼らは、「敵」とみなした中国と北朝鮮にたいして、アメリカとともに先制攻撃をおこなう軍事体制の構築にのりだしています。じっさい彼らは、最新鋭戦闘機F35や巡航ミサイルといった敵地侵攻のためのアメリカ製高額兵器を次々に導入しようとしています。さらに、中国と目と鼻の先に位置する鹿児島・沖縄において、中国との戦争を想定した敵地侵攻の日米共同軍事演習を、アメリカとともに数万の大部隊を動員してくりひろげ(10月26日~11月5日)、対中国の準臨戦態勢をとっているのです。
   こうした敵基地先制攻撃の体制づくりにとって、「武力の不保持・交戦権の否認」をうたった憲法第9条を桎梏とみなし破棄せんとしているのが菅政権です。同時に彼らは、コロナ感染対策を理由にしながら、有事の際の首相への権限強化、私権の制限を憲法に明記する「緊急事態条項」創設をたくらんでいます。まさにこの改憲は、ネオ・ファシズム憲法の制定にほかならないではありませんか。
   それだけではありません。改憲を待たずして菅政権は、マイナンバーカードを普及させることをテコとして、国民一人ひとりのあらゆる個人情報を「デジタル庁」の下に一元的に管理・監視することにのりだしています。菅政権は、「デジタル監視社会」を敷いている中国を横目で見ながら、日本をがんじがらめの超監視社会へとつくりかえようとしているのです。
   菅政権は、コロナパンデミックのもとで職を失ったり、賃金や収入が下がったりして困窮にたたきこまれている労働者・人民を、「自助」=“自分のことは自分でやれ”という理念のもとに切りすてています。他面で彼らは、経団連など大独占資本の利害を体現して、「経済のデジタル化」を一挙に推し進めようとしています。しかしこのことは、大企業経営者の意に添った大リストラ・企業再編が促進され、さらに巨万の労働者が解雇や大幅賃下げに追いこまれることになるのは明らかではありませんか。ただでさえコロナ下で困窮にたたきこまれている労働者・人民を路頭に投げ出すことを厭わないのが優勝劣敗の思想を信条とする菅政権なのです。
   このように菅政権は、強権性をむきだしにしながら日本の労働者・人民に戦争と貧困を強制する諸施策にのりだしています。私たちは、菅政権の危険な実態を今こそ批判精神をもって見ていかなければならないと思います。
   同時に世界に目を広げれば、アメリカではトランプに代わって、「分断から結束」「一つのアメリカ」をうたい、「人種的平等」を訴えたバイデンが新たな大統領に選ばれました。
   白人警察官による黒人男性の相次ぐ殺害やコロナパンデミック下で社会の底辺にいる多くの黒人労働者が感染の危険にさらされ感染症を強制されたこと、このような現実を放置し黙認しつづけたのがトランプです。このトランプにたいして、虐げられているアメリカ人民が怒りを突きつけたのだと思います。
   しかし、民主党・バイデン大統領のかかげる「一つのアメリカ」「人種的平等」なるものの内実はどういうものなのでしょうか。
 彼は「人種的平等」をスローガンとして掲げてはいますが、それは黒人の基本的人権の尊重を主張しているに過ぎません。黒人労働者の多くが、飲食・宿泊・レジャーなどのサービス産業やコンビニなどの小売り業で、超低賃金で使い捨ての非正規労働者として雇われており、しかも在宅勤務が不可能な職場であるがゆえに、コロナ感染によって真っ先に命が奪われています。他面で、一部の白人エリート層である金融業経営者は1隻数億から数十億円のプライベートクルーズ船を購入しそこからのリモートワークで巨万の富を蓄えているのです。このような極限的な貧富の格差を大前提としたアメリカの経済社会構造に、バイデン大統領は決してメスを入れようとしません。それは、バイデン大統領自身が、金融独占資本や大手サービス産業資本を自らの支持基盤とし、その独占資本家たちの利害を体現しているからです。
   私たちは人種差別としてあらわれているアメリカ社会の矛盾、とりわけコロナパンデミックでむきだしとなった貧富の格差の拡大の根底にある階級対立をいまこそ問うべきではないでしょうか。全世界的なコロナ感染拡大のもとでの様々な社会的問題を社会科学的に分析し、解決する方途を考えなければならないと思います。
   コロナパンデミックを契機として、時代が大きく変わろうとしている今ほど、私たち一人ひとりが、この社会を深くとらえ洞察する〈社会観〉を築くことが問われているときはないと思います。
   みなさん、社会問題研究会でともに学び、考えを深めていきましょう!

  (11月13日)


以下は、2020年5月に発したアピールです。

今年のテーマは「安倍政権による改憲・『戦争する国』づくりや労働者・学生への貧窮の強制にいかに立ち向かうのか」です!

    安倍政権による生活補償なき「緊急事態宣言」の発令。このもとでいま、企業経営者によって首を切られ、住みかを追われ、明日の生活も見えない困窮に追いやられる労働者が数多く生み出されています。これまでアルバイトをしながら学費や生活費を捻出してきた多くの学生も、アルバイト先を解雇され、親の収入も激減する中で、高額の学費やオンライン授業のための費用がまかなえず、退学の危機に直面しています。全国1200人の学生へのアンケート調査では、実に5人に1人が「退学を考えている」と回答しています。追いつめられた学生たちはいま口々に、「食費は一日200円」「部屋の電気もつけられない」「学費などとても払えない」と悲痛な声をあげているのです。
  まさに事態は切迫しています。にもかかわらず安倍政権は、困窮する学生にとって死活問題である学費の減免措置といった具体策について、「これから検討する」などとまったく腰が入っていません。それどころか、国立大学の学費値上げの上限枠を取り払い、学費の大幅値上げ策をなおも推進しようとしているのです。学費と生活費の工面に苦しむ学生からさらに高額の学費を徴収するなど、言語道断です。そんなことは決してあってはなりません。
    政府は直ちに困窮する学生への生活補償と学費無償化をおこなうべきです。

    安倍政権は、学生・労働者への緊急支援策をおざなりにする他方で、5.3兆円もの巨額の軍事予算は聖域として確保しています。それだけでなく、トランプ政権の要求に応えて、沖縄・辺野古への新たな米軍基地建設やアメリカ製の超高額兵器の大量購入に数兆円もの私たちの税金を注ぎこんでいます。そのうえさらに、在日米軍駐留経費(「思いやり予算」)を2000億円から8800億円へと約4.5倍も増額することをトランプ政権に確約しようとしているのです。安倍政権の目は、いったいどこを向いているのでしょうか。
    同時に安倍政権は、憲法改定に突き進もうとしています。今年の5月3日の憲法記念日。安倍首相は、極右団体「日本会議」系の改憲の会合にビデオメッセージを送り、「(『緊急事態条項』などの自民党改憲案は)極めて重く大切な課題だ」と叫びたてました。多くの民衆が新型コロナウイルスの感染拡大によって苦しんでいるときに、これに乗じて「緊急事態条項」の新設と9条改定を柱とする改憲に道を開こうとしているのが安倍政権です。「言論の自由」などの民主主義的な権利を内閣の政令一つで制限することを狙った「緊急事態条項」の新設は、ヒトラーのナチスが制定した「全権委任法」を彷彿(ほうふつ)とさせるものです。これは新たなファシズムではないでしょうか。

    世界が大きく変わろうとしているいまこそ、“なにかがおかしい”と感じたことを出発点にして、じっくりと考えるべき時です。
   「4月までにウイルスは奇跡のようになくなる」などと言いつつ感染対策を遅れに遅らせ、アメリカの人々に感染死と失業と貧困を強制し、さらに「ウイルスは中国から来た。許せない!」などと排外主義を煽るアメリカのトランプ政権。このアメリカから世界の覇権を奪いとるために一気に攻勢を強める中国の習近平政権。いままさに米・中の権力者は、ウイルスの感染拡大と経済危機に苦しむ民衆の不満・怒りを外へ向けさせるためにナショナリズムを煽りながら、むごたらしい覇権争いをくりひろげています。これは――1929年の恐慌が第二次世界大戦という惨禍をもたらしたように――新たな世界大戦勃発の危機をはらむ危険な動きではないでしょうか。
 
  「桜を見る会」問題や東京高等検察庁検事長の定年延長問題に示されたように、安倍政権が批判的な言論にたいする統制を強化し、情報のねつ造にすら手を染めているいま、“正しい情報”を探し求めるだけでは、時代の危機を深くつかみとることはできません。私たち社会問題研究会は、様々な問題をめぐって相互に調べ・討論することをつうじて、単なる知識の寄せ集めではなく自らの<社会観>をつくっていくことをめざしています。
    本年私たちは、安倍政権による改憲・「戦争する国」づくりや労働者・学生への貧窮の強制にいかに立ち向かうのかについて研究することをテーマとして、サークル活動をおこないます。研究成果は機関誌にしたり、六甲祭(神戸大学の学園祭)で展示企画をおこなったりして、学内外に発信します。ともにサークル活動をすすめよう!

    部会は週に1~2回、国際人間科学部(鶴甲第一キャンパス)の教室を借りておこなっています。体験部会などの具体的なスケジュールは、決まり次第このHPまたはツイッター(@kobe_shaken)でお知らせしますのでお気軽にどうぞ!

  (5月7日)